2021年3月9日

第7回 修繕積立金を考える? その2

「大規模修繕かけこみ寺」外装専科の伊藤岳副社長に、業界リポーターNAKA氏がマンションの大規模修繕工事に関する問題点と改善策を聞く連載シリーズの第7回。

国交省が作成した修繕積立金の目安とは?

ーー前回では「積立修繕金」がなんのためにあるのか、徴収方法はどうなっているかなどについてお聞きしました。また、国土交通省が「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を作成しているとのことでした。それも踏まえて修繕積立金の金額がどれくらいになるかについてお話しいただけるとのことでしたが、いったい国交省が見積もる修繕積立金とはいくらぐらいになるのですか?

伊藤 ︎そのお話をする前に、修繕積立金の不足するマンションが多いという事案について考えてみたいと思います。これはいま問題になっていて、分譲マンションの3割以上が、大規模修繕工事を実施するにあたって資金不足になるというのです。どうしてそんなことになるのか、実に由々しきことです。

ーーそうですね。長期計画で修繕積立金を策定して居住者から徴収してきたはずなのに、なぜ足りなくなるのか。そこは知りたいところですね。

伊藤 ︎まず、分譲マンションの販売と管理について知っておく必要があります。マンションの販売会社は販売したら終わりで、あとは関知しないというわけではありません。分譲されたマンションには管理会社が設置されます。

ところが、マンションの管理を担う管理会社のほとんどは販売会社系列の会社です。販売したあとに系列会社がアフターサービスも兼ねて管理会社として関わるのは確かに合理的ですが、ここで不透明な問題が生じる可能性もあります。管理会社は「管理委託費」として管理費を徴収し、販売後も毎月利益を確保しようとしますが、サービスや価格による競争がないために「管理費」を高めに設定する傾向があると言われるからです。

一方、販売会社はマンションを販売するためとして分譲区分の価格以外の諸経費を抑えて、毎月の掛かりを安く見せようとします。修繕積立金はマンションの区分所有者が組織した管理組合の責任で、来たるべき大規模修繕工事への資金としてプールするものです。ですが、積立金額はマンション販売の段階であらかじめ販売会社が設定しています。

そこで、マンションの分譲区分購入希望者は、販売会社が設定した管理費・修繕積立金を受け入れて購入することになるのですが、購入者にとっては毎月のローンや管理費・修繕積立金が安いに越したことはありません。そうした心理に熟知している販売会社は、修繕積立金をあえて安めに見積もり、購入希望者が購入しやすくするというわけです。

つまり、「管理費は高めに、修繕積立金は安めに」という方式が成り立つ、というわけです。ところが、いざ大規模修繕工事となったときに、修繕積立金が安めに設定されていると足りなくなるのは避けられませんね。これが修繕積立金の不足する第一の要因です。

第二の要因は、大規模修繕計画の再検討を5年ごとに行うほうがいいと言われているのに、見直しを怠るケースがあるということです。

当初に大規模修繕計画をよく検討したとしても、長年の風雨など自然現象によってマンションの劣化状況が予測より進行する可能性が生じます。そうなると予定していた積立金では不足するケースも生まれてくるわけです。また、大規模修繕は長期計画ですから、その間に物価の高騰などがあり得ます。

そんな不確定要素にも対処するためにも5年ほどで計画の再検討・見直しが必要となるわけです。そこをスルーしてしまうと、当然、修繕積立金は不足します。

ーーなるほど、そんな実態があるんですね。特に最初から修繕積立金を安く設定しているのであれば、工事に際して足りなくなるのは当然です。では、修繕積立金が不足するとどうなるのでしょうか?

伊藤 ︎いろいろと情報を確認すると、次の4つに対処法が集約されるようです。

・居住者から不足分につき一時金を徴収する

・管理会社への毎月支払う管理委託費を減額してもらう

・自治体が施行している助成金制度を利用する

・銀行やリース会社などから借り入れる

というものですが、だいたいのマンションは居住者から一時金を徴収するか、銀行などから借り入れる方法をとっています。どちらにしろ居住者には予期せぬ負担が発生しますから、そうならないよう、よくよく管理会社とも話し合って毎月の修繕積立金額を決めていく必要があるわけです。

ーーそうですね、修繕積立金が不足しないかなど事前チェックは重要ですね。

ところで、今回お聞きしたかった国交省の考える修繕積立金とは、どのくらいになるのですか?

伊藤 ︎国交省はモデルケースを設定しています。15階以下のマンションで、延べ床面積が①5000平方メートル未満、②5000〜10000平方メートル、③10000平方メートル以上の3つのケースで、専有床面積を80平方メートルと設定しています。

①のケースでは、修繕積立金の平均値が1平方メートル218円なので毎月17,440円、②では、1平方メートル202円で16,160円、③では、1平方メートル178円で14,240円です。大きなマンションほど毎月の修繕積立金が安めとなっていますが、それ以外に20階以上の高層マンションでは高くなる傾向があるようです。

ただし、これらはあくまでも目安ですし、マンションに機械式駐車場がある場合は、その修繕積立金も加算されます。昇降式の違いで概ね毎月7,000円〜14,000円ぐらいの積立金ですが、マンションを購入するときは、ローンのほかに、管理費・修繕積立金・機械式駐車場がある場合はその積立金も加味して検討することが求められるというわけです。

  • ●国交省では、目安となる修繕積立金額の算出方法を提供しています。下記のリンクをクリックして参考にしてください。

http://www.mlit.go.jp/common/001080837.pdf