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マンション大規模修繕の費用相場は?工事費をおさえるポイントも紹介

マンションは、定期的な修繕により資産価値を維持することができます。とはいえ、大規模修繕をおこなうとなれば費用がかかりますし、工事費はマンションの規模が大きくなるほど増えていくものです。

大規模修繕の工事費は、管理組合・オーナーにとってもっとも気になるところでしょう。工事の費用相場は、どのくらいなのでしょうか?

ここでは、マンション大規模修繕の費用相場をお伝えするとともに、工事費をおさえるポイントを紹介します。

 

マンション大規模修繕の費用相場

国土交通省の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査(令和3年度)」によれば、マンション大規模修繕の工事費は、戸あたり100125万円の割合が27.0%ともっとも多く、次いで75100万円(24.7%)、125150万円(17.4%)となっています。

 

(参照元 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査|国土交通省)

 

表を見てわかるように、マンション大規模修繕は工事会社により費用が大きく違ってきます。なお、外装専科の戸あたり工事費は、平均70万円台(税込)です。

 

工事費の大まかなシミュレーション方法

マンションの総戸数から、大規模修繕にかかる大まかな工事費をシミュレーションすることができます。計算式は、次のようになります。

 

「マンションの総戸数」×「戸あたり工事金額」=大規模修繕にかかる大まかな工事費

 

例えば、マンションの総戸数が20戸であり、戸あたり工事金額が100万円であった場合、「20戸」×「100万円」=2,000万円と、大規模修繕にかかる金額を大まかにシミュレーションすることが可能です。

 

ただし、実際の大規模修繕は、工事の発注方法・修繕規模や内容・追加工事の有無などにより、業者ごとに工事金額がずいぶんと変わってくることに注意が必要です。

大規模修繕の具体的な工事費を知るには、工事会社に見積もりをとってみましょう。その際には、見積もりの詳しい内容について担当者に質問することもおすすめします。

 

工事費をおさえるポイント

限られた修繕積立金を大事に活用するには、工事費はできる限りおさえたいものです。どのようにすれば工事費をおさえることができるのでしょうか?ここからは、大規模修繕の工事費をおさえるポイントについてお伝えします。

 

①不要不急の工事はしない

一般的なマンションの大規模修繕では、外壁の補修や塗装・階段や廊下の改修工事・シーリング工事・バルコニーや屋上の防水工事などをおこないます。いずれもマンションの機能性・美観性を維持するのに必要な工事ですが、実は、お客様のマンションにとって不要不急の工事も少なくありません。

例えば、防水を目的におこなうシーリング工事。この工事では、窓枠とコンクリートの間の目地などにゴム状のシーリング材を詰めていくのですが、大きいマンションになると、工事規模が数千メートルにもなります。しかしながら、このシーリング材には、「塗料がかかっていれば経年劣化しにくい」という特徴があります。つまり、塗料に守られ、経年劣化せずにシーリング材の防水機能が維持できているのであれば、その部分はシーリングの打ち替え工事をする必要がないのです。する必要のない箇所のシーリング打ち替え工事をなくせば、当然、その分の工事費は安くなります。

このように、大規模修繕のなかには「不要不急の工事」もあり、そうした工事を省いていけば工事費用をおさえることができるのです。

 

②「責任施工方式」で工事を発注する

管理組合・オーナーがマンションの大規模修繕工事を発注する方法には、「設計・監理方式」と「責任施工方式」があります。

「設計・監理方式」とは、管理組合・オーナーから依頼を受けた設計事務所・コンサルティング会社がマンションを診断・調査し、専門家のアドバイスを受けながら工事会社を選定する方法です。「責任施工方式」とは、管理組合・オーナーが自ら工事会社を探し、直接工事会社に工事を依頼する方法です。

「設計・監理方式」は、建物の調査診断から工事業者の選定・工事の施工品質チェックまで設計事務所・コンサルティング会社が請け負うため、管理組合・オーナーの手間暇がかからないというメリットがあります。一方で、工事費用のほかに専門家へのコンサルティング料が発生するため、大規模修繕にかかる費用が全体的に高くなる傾向があります。

「責任施工方式」は、管理組合・オーナーが自ら工事会社を探す必要があるため、大規模修繕をするにあたり手間暇がかかりやすいのが特徴です。一方で、管理組合・オーナーと工事会社間で契約が完結するため、工事費以外に費用が発生せず全体的に割安になる傾向があります。

このほかにも、それぞれの発注方式にはメリット・デメリットがありますが、工事費を安くおさえる観点で考えれば、「責任施工方式」で工事を発注するのが効果的です。

 

③「共通仕様書」一辺倒から脱却する

複数の工事会社から見積もりをとる場合、マンションの管理会社やコンサルタントが「共通仕様書」を作成することがあります。共通仕様書とは、見積もりに参加する工事会社が同一条件で見積もれることを目的に作成された書類です。共通仕様書を使用して見積もりをとると金額面で工事会社を比較しやすくなるのですが、その反面、共通仕様書から外れた内容の見積もりを出そうとする会社を自動的に排除してしまうことになります。要するに、工事会社が安く工事をしようと考えていても、あらかじめ見積もりのルールが決まっていると、それ以上に工事費を安くできないのです。

このような事態を防ぐには、大規模修繕の見積もりをとる際に、共通仕様書を遵守しすぎないことが必要です。例えば、工事会社に共通仕様書を渡す時に、「一部内容を変更して各社の考え方に基づく見積書でも可能」と一言付け加えるだけでも、工事会社は、効率的に安く工事できる工夫を盛り込んだ見積もりを提示することができます。工事会社に自由度の高い見積もりを提示させる機会をつくれると、工事費をおさえやすくなるでしょう。

 

無駄をなくして、適切な時期に必要な工事を

一般的な大規模修繕工事というのは、建物からすれば“お化粧直し”みたいなもので、無理して大がかりな工事をしなくても建物の安全性や機能性・美観性をすぐに大きく損なわれることは考えにくいです。もちろん、定期的に修繕したほうがマンションの資産価値を維持しつつ、住民も快適に暮らしやすくなるでしょう。

「適切な時期に、必要な工事のみをおこなうこと」

これが、大規模修繕を成功させるポイントです。

大規模修繕に関わる無駄を徹底的に省き、大切な修繕積立金を有効的に活用しましょう。