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大規模修繕を成功させるポイント【1】誰も教えてくれない業界の事情とは?

高額な費用がかかり、住民の資産価値維持にも関わる大規模修繕。管理組合・オーナーとしては、工事費をおさえつつ、マンションの美観性と住民の快適な暮らしを守りたいと思うものでしょう。

しかしながら、無理して過度な大規模修繕をおこなっても資金ぐりに苦しむだけで、必ずしも納得のいく結果が得られるとは限りません。

そこで、外装専科では、大規模修繕を成功させるポイントを2回に分けて紹介します。第1回目は、「誰も教えてくれない業界の事情」をテーマに、大規模修繕の工事費がかさみやすい理由についてお伝えします。

 

マンションの状態を問わない、“計画ありき”の大規模修繕

マンションの長期修繕計画には、住民の快適な暮らしと建物の資産価値を維持するために、定期的な大規模修繕の実施が含まれています。そのため、大規模修繕を予定している時期になると、「外壁の補修や防水工事などをしましょう」となるのです。

しかしながら、「マンション」というのは、長期修繕計画通りに修繕せずともただちに大きく美観性を損なったり、安全性や快適性が失われたりするものではありません。また、マンションの傷み・劣化は、建物の築年数や立地条件などでも違ってきます。ですから、長期修繕計画の枠にはめ込んで、無理に修繕工事を実施する必要はないのです。

ところが、実際には、「大規模修繕の予定時期だから」と言って、“計画ありき”で工事が進められてしまうケースも少なくありません。本当に必要な工事であればすぐに取りかかるべきですが、マンションにとって緊急性の低い工事であれば、実施したところで工事費がかさむだけです。実は、そうした不要不急の工事を実施していることが、大規模修繕工事のコストを高めてしまっている一因でもあるのです。

 

同一条件で見積もりをとるがゆえにつり上がる工事金額

大規模修繕工事をするとなれば、複数の工事会社から見積もりをとるのが一般的です。そして、見積もりをとる際は、工事会社に「共通仕様書」を配布し同一条件で見積もりをとるケースが多いです。そのほうが、管理組合・オーナーが工事の費用を比較しやすいと、“業界では”考えられているからです。

けれども、この同一条件で見積もりをとることも、大規模修繕の工事費をつり上げる要因になっています。なぜなら、管理組合・オーナーまたはコンサルタントから共通仕様書を提示され「この条件で見積もりを出して欲しい」と言われてしまうと、工事会社としては、もっと良いアイデアがあっても提示された条件に従い、見積もりを出さざるを得なくなるからです。つまり、もっと安く工事を実施できたかもしれないのに、同一条件で見積もりをとったがために工事費がつり上がる、という事態に陥ってしまうこともあるのです。

大規模修繕では、「物言わぬ管理組合・オーナー」が損しやすい

管理組合・オーナーからすると、大規模修繕を管理会社に一任したくなるものでしょう。誰だって知らない会社に工事を依頼するよりも、なじみのある管理会社を頼ったほうが安心できるはずです。

ここで注意が必要なのは、なじみのある管理会社よりも、より良い条件で工事を受注できる会社もあるということです。見積もりに参加する会社が一社しかなければ、当然、そこには競争原理が働かず、工事のコストが下がったりサービスの質が良くなったりしにくくなります。つまり、他の工事会社と比較することなく、何も考えずに管理会社に一任していると、気づかないうちに工事費などの条件面で損をしてしまうこともあるのです。

管理会社に大規模修繕を依頼することが悪いのではありません。大切なのは、「いつもお世話になっているから管理会社に大規模修繕を頼もう」ではなく、いろいろな会社の条件を比較し、しっかりと吟味した上で工事会社を選ぶことです。

 

マンションの現状を見極め、必要な修繕工事をおこなう視点が求められる

マンションの大規模修繕は、建物の状態を見極め、管理組合・オーナー自らが修繕の必要性を理解した上で進めていくことが重要です。また、管理会社任せではなく、管理組合・オーナーとして、しっかりと工事会社を吟味する姿勢も必要です。そうした視点で大規模修繕を計画・実施できると、適正な価格で納得のいく修繕工事を発注しやすくなるでしょう。

では、大規模修繕工事は、どのような工事会社に依頼すれば良いのか?次回は、大規模修繕を成功させるポイントとして、「信頼できる工事会社の選び方」についてお伝えします。