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マンションの外壁補修とは?工事の目的と建物劣化のサインを紹介

外壁の塗装が剥がれたり、傷が目立ったりと、マンションは築年数が経過すれば劣化していきます。なかでも、美観を損なうマンション外壁の劣化は、住民が快適に暮らすためにも定期的な補修が大切です。そのため、マンションの大規模修繕では、外壁補修が重要な項目のひとつに位置づけられています。どのような状態になったら外壁補修をすべきか、管理組合・オーナーとしては気になるところでしょう。

ここでは、マンションの外壁補修の目的を解説するとともに、補修が必要となる建物劣化のサインについてお伝えします。

 

マンションの外壁補修の目的

まずは、外壁補修の目的を解説します。外壁補修の目的は、主に3つです。

 

外壁の防水性や耐久性を改善する

一般的に、マンションの外壁は防水加工が施されています。これが、外壁から躯体内部に水分や炭酸ガスが侵入するのを防ぐ要素のひとつになっているのです。マンションが経年劣化すると防水効果がなくなったり、ひび割れ(クラック)たりなどして、水分や炭酸ガスが建物内部に侵入しやすくなります。こうなるとコンクリートの中性化が進み、内部の鉄筋がさび付き、建物の耐久性が失われてしまいます。ですから、マンションの外壁補修では、水や炭酸ガスから建物を守るために防水性や耐久性を改善する工事をおこなうのです。

タイルの落下を防止し、居住者・第三者の安全を守る

外壁に使用されているタイルは、劣化が進むと割れたり浮いたりして、それが進行すると剥落を起こし落下します。 テレビなどのメディアでも、「外壁タイルが落下した」というニュースが散見されます。落下した先に人がいれば、タイルが直撃して大きな事故につながる可能性もあるのです。そうした事故を防ぐためにも、外壁補修は重要な工事になります。

マンションの資産価値を高める

マンションは、新築時から時間が経過するにつれて資産価値が下がっていきます。しかしながら、定期的に外壁補修をおこなうとマンションの美観性や機能性が改善され、資産価値を維持したり、高めたりすることができます。

 

外壁補修の種類

「外壁補修」と一口に言っても、外壁の状態により工事内容はさまざまです。つづいては、一般的な外壁補修の種類を紹介します。

コンクリート補修

マンションの多くは、鉄筋コンクリート造です。コンクリートは、乾燥や温度変化などにより、膨張と伸縮をくり返す特徴があります。この性質があることでコンクリートにひび割れが発生し、建物の内部構造にさまざまな問題を生じさせるのです。

そこで、コンクリート補修では、ひび割れた箇所に樹脂モルタルやエポキシモルタル・シーリング材を充填し、割れ目を埋めていきます。なお、チョーキング現象(劣化により外壁に白い粉が付着している状態)が発生している場合は、高圧水洗浄などの下地補修をおこなった上で、仕上げ塗装をすることが一般的です。

塗装

塗装は、①建物をきれいにすること ②既存の塗膜を紫外線や風雨から守ること ③外壁からの雨水の侵入を防ぐことを目的におこないます。外壁の状態に合わせ、塗料の種類・塗り方、塗装回数などを調整することでマンションの美観性の改善・劣化防止・防水効果を高めていきます。

高圧水洗浄

普段から風雨があたっている外壁は、言ってみれば日常的に洗浄されている状態にあるため、必ずしも高圧水洗浄が必要とは限りません。ただし、チョーキング現象が発生していたり、既存の塗装の付着力が弱まっていたりする場合は、高圧水洗浄をおこなうことでその後に施す塗装の効果を高めていきます。

タイル張り

タイル仕上げのマンションは、コンクリート面にタイルを付着する手法が採用されています。タイルは耐久性が高く、張り替えの手軽さからメンテナンスしやすいと言われていますが、時間が経過するにつれてタイルの接着力が弱まると「浮き」や「剥がれ」といった不具合が発生します。

外壁補修では、パルハンマー(打検棒)と呼ばれる専用器具でタイルを叩いて状態を確認(打診調査)し、不具合が発生しているタイルを貼り替えたり、タイルと下地の間に樹脂を注入したり工事を施し、タイルの落下防止を予防していきます。

 

建物劣化のサイン

マンションは、どのような状態になったら修繕が必要と考えれば良いのでしょうか?ここからは、建物劣化のサインをお伝えします。

塗装面が剥がれている

マンションは、雨や湿気などの水分が付着する想定で建てられており、外壁にはあらかじめ防水処理が施されています。しかしながら、時間経過により水分が壁の内部に侵入することで、外壁の塗装面がはがれてしまうことがあります。この状態を放置しておくと建物内部の鉄筋がさび、マンション全体の耐久性が低下するのです。

外壁を観察してみて、塗装の一部が剥がれていることが確認できたら建物が劣化しているサインです。

塗装面に触れると白い粉が落ちる

外壁に使用されている塗料は、顔料・樹脂・溶剤・添加剤などで構成され、それぞれの相互作用により耐久性を発揮しています。けれども、塗料は、雨風や太陽光を長年受けることで劣化し、白い粉状になってしまうのです。これをチョーキング現象と言い、放置すると建物の保護機能が低下する原因になります。

マンションを手で触れた時に白い粉が付着するようであれば、外壁が劣化していると考えられます。

細かいひび割れを目視で確認できる

外壁に発生するひび割れは「クラック」と呼ばれ、髪の毛くらいからそれ以上の大きさまで、さまざまなものがあります。ひび割れは、地震や道路の振動などの物理的刺激によっても発生します。これを放置すると、建物内部に水分が侵入し、雨漏りや鉄筋のさびの原因になるのです。

ひび割れの有無は、マンションの外壁を観察することで可能です。ただし、ひび割れの大きさや発生場所によっては、目視で観察するのが難しい場合も多いです。マンション全体にわたり、補修の必要があるひび割れがないか確認するには、大規模修繕の専門業者に建物調査を依頼することをおすすめします。

 

外壁補修をおこなうには?

まずは、工事会社に建物調査を依頼してみましょう。工事会社のなかには、マンションの調査に無料で対応している事業者が多いです。

ただし、マンションの調査をするとなれば、信頼できる工事会社に依頼するのも大切です。なぜなら、マンションの状態を適切に調査できないと、外壁補修工事を実施するとなった時に、建物にとって不要不急の工事や過度な工事をおこなってしまうことになるからです。

そこで、信頼できる工事会社を選ぶ時には、次のような点がポイントになります。

 

1.外壁補修や大規模修繕の施工実績が豊富で、すべての工事実績を開示している

2.工事料金の見積もりがわかりやすく、過剰な工事を提案しない

3.アフターサービスの内容や期間などを具体的に提示してくれる

4.都道府県や国土交通省の認可を受けている

 

複数の工事会社に見積もりを依頼し、比較検討した上で、本当に信頼できる工事会社に外壁補修を依頼しましょう。

 

適切な時期に必要な工事を施し、住民が快適に暮らせるように

マンションの外壁は、雨風や太陽光にさらされ、振動などの物理的刺激も受けることで気がつかないうちにダメージを蓄積しているものです。傷みや劣化をそのままにしていると、水分が侵入して内部の鉄筋がさびたり、事故につながったりします。

建物の劣化が疑われたら、外壁補修を検討し、住民が快適に暮らせるように努めましょう。