2021年1月18日

第4回 大規模修繕工事での共通仕様書とは? その1

「大規模修繕かけこみ寺」外装専科の伊藤岳副社長に、業界リポーターNAKA氏がマンションの大規模修繕工事に関する問題点と改善策を聞く連載シリーズの第4回。

合理的に見える工事項目を列記した「共通仕様書」に落とし穴が!

ーー前回のお話でマンションの第1回目の修繕工事は国交省のデータでだいたい築13〜16年でしたが、推奨されるのは12年ぐらいだとわかりました。ですが、時期が来たらまず信頼できる設計コンサルタントか良心的な工事業者に建物診断をしてもらったほうがいい、と言いますね。

伊藤 ︎外装専科では工事を請け負った段階で建物チェックをするので、弊社に関しては建物の事前診断は必要ありません。

 ただし、一般的には居住するマンションにどの程度の傷みがあるかを確定してもらうことは大切でしょうね。まず建物診断をしてもらい、そのうえで工事の入札業者に大規模修繕工事の競争見積もりを取るのであれば問題はありません。ところが、そのときに「共通仕様書」に記入させることで「落とし穴」が生じるんです。

ーー共通仕様書? それの何が問題なのですか?

伊藤 ︎マンションの管理組合は、大規模修繕を実施するにあたって管理会社に相見積もりを依頼するはずです。そのとき参加した工事業者に対して、共通の仕様書に見積もりを記入させるやり方です。共通仕様書にはおよそ3つの種類があります。

・管理会社の上部団体で統一された書式

・管理会社独自の書式

・設計コンサルタント独自の書式

の3パターンです。

 一見、共通仕様書は合理的に見えます。工事方法・工事範囲・施工数量が各施工業者同一に記入されるわけですから、項目ごとに金額が比較できるわけです。マンションの管理組合にとっては至極便利ですね。

 ところが、そこに落し穴があるんです。記入された共通仕様書をチェックすると、なぜかどの施工業者の見積もりも大幅に割高になっている。不思議ですよね。

ーーどうしてですか? よくわかりませんが。

伊藤 ︎共通仕様書の項目がマンションごとの劣化状態に対応しているものではなく、平均化された項目だからです。つまり、記入項目のほとんどが当該マンションの実態に適合したものではなく、「大規模修繕」を前提に作成されているためです。

 そんな共通仕様書の項目に記入しなければならないわけですから、見積もりに参加した施工業者は首を傾げながらも指定された項目に金額を記入しなければなりません。

ーーいやびっくりです。それでは事前に建物診断をお願いしてマンションの状態をチェックしていても意味がなくなりますね。

伊藤 ︎その通りです。具体例を挙げておきましょうか。

 例えば、工事に際して項目に「組立足場」と指定されていたとします。そうすると、当該マンションの劣化状態からそんな大掛かりな足場を組む必要などなく、ゴンドラ足場で十分に対応できるとしても、項目があるために高額の「組立足場」で見積もりを記入せざるを得なくなるわけです。

 また、項目に「屋上防水」とあったとします。実際には事前の建物診断で今回の修繕では屋上防水の必要はなく、次回の修繕で十分に間に合うとしても共通仕様書通りに見積もらなければなりません。これでは無駄もいいところです。

 残念ながら、管理会社や設計コンサルタントに丸投げしてしまうと、こうした結果になりがちです。

 マンションの管理組合としては、共通仕様書に即した結果、高額な見積もりになるようなやり方は避けなければなりません。そのためにはやはり信頼できる工事業者に建物の劣化状態なども含めて修繕方法をきちんと相談すべきでしょう。