長期修繕計画とは、マンションの劣化を防ぎ、長期にわたり資産価値を維持するために策定する、修繕・取替え工事に関する計画です。修繕工事には大きな費用がかかるため、しっかりとした計画に基づき必要となる修繕費用を徴収しなければ、修繕費用が足りず工事が行えない可能性があります。工事ができなければ劣化が進行し、マンションの住環境の悪化を招きかねません。
本記事では、長期修繕計画の概要や計画が必要な理由、作成方法、作成時のポイントを詳しく解説します。長期修繕計画に関する基本的な知識を身に付け、適切なマンションの維持管理を行いましょう。
目次
長期修繕計画とは?
長期修繕計画とは、先の30年程度について、マンションに必要な修繕・取替工事の種類や費用を明らかにし、工事の計画を立てることです。
マンションは雨や風、紫外線の影響で劣化するため、年月が経つと外壁にひび割れや塗装剥がれなどが発生し、雨漏りなどのリスクが高まります。配管や水回り設備などが経年劣化すると、水漏れなどが起こる恐れもあります。
建物や設備の劣化に対して適切にメンテナンスできなければ、マンションの住環境の悪化を招き、資産価値が低下するでしょう。長期に渡ってマンションの住環境や資産価値を維持していくためには、長期的な修繕工事の計画を立てることが大切です。
なお、修繕工事の範囲は分譲マンションの共用部分が対象です。居住スペースなどの専有部分は、各区分所有者がメンテナンスを行う範囲のため、修繕工事の対象とはなりません。
長期修繕計画が必要な理由
長期修繕計画が必要となる主な理由は2つあります。
将来的な修繕工事の費用を把握するため
一つ目は、将来的に修繕工事に必要となる費用を把握するためです。
マンションの外壁や屋上の修繕工事には、多額の費用が必要です。マンションの規模や劣化状態によっても異なりますが、1回目の大規模修繕工事でかかる金額は、国土交通省の調査では一戸当たり「101〜125万円以上」という割合が最も多くなっています(※)。
大規模な工事を行うごとに区分所有者から修繕費用を徴収する方法は、住民に大きな負担を強いることになるため、修繕積立金という形で毎月少しずつ修繕のための費用を徴収することが一般的です。この修繕積立金が十分でないと、いざ工事を行う際に費用不足で必要な工事ができない可能性もあるでしょう。
長期的な修繕工事の計画を立てていれば、今後必要になる工事の種類や時期、工事にかかる費用が明らかになります。工事費用が明らかになれば必要な修繕費用の額が分かるため、大規模な工事までに十分な金額を確保しておくことが可能です。
※参考:国土交通省.「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」.“≪2≫ マンション大規模修繕工事について”.P15.
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001619430.pdf ,(参照2025-03-21).
マンションの劣化を防ぐため
二つ目は、マンションの劣化を防ぐためです。適切な修繕計画を立てなければ、マンションの劣化が早まり、住環境が悪化する可能性があります。
修繕計画が不十分で場当たり的な工事を行っていると、いざ修繕が必要なった際に、費用不足により工事が行えない恐れがあります。必要な工事が行えず、建物の劣化や住環境の悪化を招くと、建物の資産価値にも影響します。
適切な長期修繕計画を作成し、計画的に工事を行えば、マンションの住環境を良好な状態に維持しやすくなるでしょう。
長期修繕計画のポイント
長期修繕計画を作成してうまく活用していくためには、いくつか考慮しておきたいポイントがあります。
専門家と連携して作成・運用する
長期修繕計画は、マンション管理士などの外部の専門家と連携して作成・運用を行いましょう。
計画書は各マンションに合わせて作成する必要があり、建築や設備に関する専門知識が必要です。計画に不備があれば必要な工事が行われなかったり、必要な積立金の額が算出できず、工事費用が足りなかったりする可能性があります。より適切な修繕計画を立てるためにも、知識を持った専門家に意見を求めましょう。
専門家に依頼する場合、作成業務以外にも会計のチェックやコンサルティングなど、マンションの運営管理業務のサポートをしてもらえるメリットがあります。
特にマンション管理士は、国家資格を持つマンション管理のプロフェッショナルです。法律や建築、会計など、マンション管理に必要な幅広い知識を有しているため、大規模修繕の計画立案から修繕積立金の徴収まで、幅広い面においてサポートが期待できるでしょう。
修繕費用の確保を計画的に行う
修繕計画を立てたら大規模修繕工事に備え、修繕費用の確保を行いましょう。もし当初の計画通りに修繕費用を確保できない場合は、修繕積立金の増額や一時金の徴収、金融機関からの融資などを適宜検討し、修繕費用を確保することが大切です。
特に、段階増額積立方式の場合、適切なタイミングで修繕積立金を増額することが重要です。修繕積立金の増額が遅れると、1回目の修繕工事の費用は確保できても、2回目、3回目の工事では費用が足りなくなる可能性があります。年月がたってからの工事の方が、劣化の進行により修繕が必要な箇所が多くなるためです。
また修繕計画の後半に差し掛かると、区分所有者が年齢を重ねて収入が少なくなっている可能性もあり、増額への賛同が得にくくなることもあります。増額や一時金の徴収タイミングを見極めるのが難しい場合は、マンション管理士などの専門家に相談してみましょう。
長期修繕計画は一定期間ごとに見直す
長期修繕計画は一度作成したら終わりではなく、一定期間ごとに見直しましょう。計画書には、作成時の建物の状況や物価を反映した、予定の工事内容や価格を記載しているためです。
計画書の内容が変動し精度が低下すると、適切な修繕積立金の額も狂ってしまい、工事費用が不足する恐れもあります。そのため修繕計画は定期的に見直しを行い、工事内容や時期、工事費用、積立金の額を適宜修正していくことが大切です。
なお、修繕計画は次のような要因で変動します。
- 建物や設備の想定以上の劣化による追加工事の発生
- 新たな材料や工法の開発による耐用年数の変化
- 修繕積立金の運用利率、借入金の金利の変動
- 物価の上昇による工事費価格の高騰
長期修繕計画をより適切な内容に修正するためには、大規模修繕工事の前後、もしくは修繕工事と修繕工事の中間あたりに定期的に確認すると良いでしょう。なお、国土交通省は5年ごとの修繕計画の見直しを推奨しています(※)。
※参考:国土交通省.「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン」.“10 長期修繕計画の見直し”.https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747006.pdf ,(2024-06-07).
長期修繕計画を立ててマンションの資産価値を維持しよう
長期修繕計画は、マンションの美観や機能性、資産価値の維持のために必要です。長期修繕計画を作成する際は、マンション管理士などの専門家と連携して工事の種類・実施時期、概算工事費を洗い出し、必要な修繕積立金の額を明確にします。計画書は完成したら終わりではなく、社会情勢の変化や物価高騰などで変化するため、定期的に見直しが必要です。
修繕計画の見直しなどは専門家と連携しながら、適切な計画に基づき長期的な視点でマンション管理を行うことで、建物の価値を守りながら快適な住環境を維持できるでしょう。
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- 大規模修繕の基礎知識