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大規模修繕の豆知識

大規模修繕工事の進め方を10ステップで解説!ポイントや告知項目も紹介

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マンションの管理・運営では、大規模修繕工事が必要です。適切な周期で工事を実施することで、マンションの状態や資産価値の維持につながります。

大規模修繕工事が必要な時期に差し掛かり、進め方や手順が分からず悩む管理者の方も多いでしょう。

本記事では、大規模修繕工事の進め方を10ステップで解説します。基本的なポイントや注意事項も解説しているため、ぜひ参考にしてください。

大規模修繕工事とは?

大規模修繕工事はマンションの経年劣化に対応し、快適な居住環境と資産価値を維持するために重要です。国土交通省のガイドラインでは居住者の生活品質の向上も重視しています。

工事は一般的に12~15年周期で実施され、外壁補修、防水工事、塗装などが主な内容です(※)。ただし、これはあくまでも国土交通省が提示する目安であり、実際には必ずしも12~15年で大規模修繕が必要だとは限りません。周辺環境や日当たりといった条件によって、マンションの損傷や劣化の度合いが変わるからです。周期だけを参考にするのではなく、実際の住み心地や劣化の度合いを踏まえた上で、修繕のタイミングを検討しましょう。

大規模修繕は建物の寿命を延ばし、安全性や快適性を保つために必要です。また適切な時期に修繕を実施すれば、建物の劣化するスピードを緩められる他、将来的な修繕費用の削減にもつながります。定期的な修繕によって建物の美観を保ったり、資産価値を維持したりすることも可能です。

このように、計画的な大規模修繕は居住者にとって安全で快適な住環境を確保し、長期的に見て経済的なメリットをもたらす重要な取り組みといえるでしょう。

※参考:国土交通省.「長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン 長期修繕計画作成ガイドラインコメント」.“5 計画期間の設定”.https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747006.pdf ,(2024-06).

大規模修繕工事の進め方を10ステップで解説

大規模修繕工事の進め方を10ステップで解説します。大規模修繕工事を控えているマンション管理組合の方は、全体の流れを把握しておきましょう。

1. 管理組合内で修繕委員会を発足する

大規模修繕工事の検討に当たっては、まず必要に応じて管理組合内で修繕委員会を発足します。修繕委員会は工事の必要性の検討や施工会社の選定、資金計画の策定などを担います。

特に重要なのが、工事の必要性を見極める初期段階です。管理会社からの提案や国交省のガイドラインを鵜呑みにせず、建物の現状を客観的に評価する必要があります。自分たちだけで修繕の必要性を判断することが難しければ、必要に応じて施工会社に調査を依頼するのも良いでしょう。

また、大規模修繕工事の資金計画は工事後に見直すのではなく、事前に検討することが大切です。適切なステップを踏み、組合員の経済的な負担の軽減や建物の資産価値の維持につなげましょう。

2. 大規模修繕工事の発注方式を決める

大規模修繕工事を成功させるためには、適切な発注方式を選ぶ必要があります。工事の計画段階から専門家と連携し、透明性の高いプロセスを確立することが重要です。

工事の発注方式には、主に「責任施工方式」「管理会社主導方式」「設計監理方式」があります。それぞれの特徴は以下の通りです。

発注方式

概要

メリット

デメリット

責任施工方式

施工会社に調査・設計・施工を一括で任せる方式

  • 一括発注で手間が少ない
  • 工事期間が短縮しやすい
  • コストを抑えやすい場合がある
  • 工事会社主体のため品質が施工会社都合になりやすい
  • 工事内容のチェックが難しい
  • 発注者側の知識不足がリスクになる

管理会社主導方式

管理会社が主導して工事計画・業者選定・工事監理を行う方式

  • 管理会社に任せられるため負担が少ない
  • 建物の管理履歴を把握しているためスムーズ
  • 管理会社の中立性が問題になる場合がある
  • コストや品質の透明性が確保しにくいことがある
  • 施工会社選定が限定的になりやすい

設計監理方式

専門の設計事務所に調査・設計・監理を依頼し、施工は別途選定する方式

  • 設計者が発注者側に立って監理するため品質の担保がある
  • 工事内容や見積の透明性が高い
  • 競争原理が働き適正価格で発注できる可能性が高まる
  • 設計監理費用が別途かかる
  • 計画から工事完了まで時間がかかる
  • 発注者側にも一定の知識や対応力が求められる

大規模修繕工事を円滑に進めるためには、各方式を比較検討し、マンションの状況や予算に適した方法を選ぶことが重要です。

3. 建物診断を実施する

大規模修繕工事では建物の劣化状況を把握した上で、適切な修繕計画を立てることも必要です。

診断は目視や打診による簡易的なものから、機械調査を含む詳細なものまで多岐にわたります。機械調査とは、試験用の機器を用いて建物の劣化状態を把握する調査です。外壁の付着力やコンクリートの中性化深度など、建物の構造的な強度を測定します。集められたデータは、修繕の緊急性や優先順位を判断する上での根拠となります。

診断結果に基づいて、修繕委員会は工事の実施可否や長期修繕計画の見直しを検討します。この際に重要なのは業界関係者の意見に偏らず、組合主導で客観的な判断を下すことです。

必要以上の修繕工事をすることにならないよう、慎重に診断をしてもらいましょう。

4. 大規模修繕工事の基本計画を立てる

診断結果を基に、修繕工事の内容と優先度を決めます。劣化が顕著な箇所は重点的に修繕し、状態の良い箇所は維持しつつ、住人の要望に応じた修繕工事を検討しましょう。

並行して修繕積立金の状況を把握し、不足する場合は一時金の徴収や融資、工事時期の調整を検討しましょう。将来の修繕計画も考慮して、長期的な資金配分を行うことが大切です。

また、工事計画が管理規約や法令に適合しているかを確認するのも忘れてはいけません。専有部分を含む工事や居住者の立ち入りが必要な場合は、規約を事前に確認し、必要な手続きを行いましょう。

5. 大規模修繕工事の資金計画を立てる

基本計画を立てた後は、資金計画を立てましょう。まず、専門家のアドバイスを参考にして、修繕委員会にて工事費用と内容の妥当性を検討します。建物の現状に合わせた工事を選定し、不要不急の工事はなるべく省き、建物の現状に合わせた工事を選定することで無理のない予算に収めることが重要です。

この際に、地方公共団体の助成金制度を活用できないか調査します。バリアフリー化や緑化工事など、助成金制度の利用条件を満たす工事を実施する場合は、積極的に利用しましょう。

資金計画では、修繕積立金の現状を分析し、工事費用を賄えるかどうかを確認することも大切です。将来の修繕も見据え、資金が不足する場合は借り入れや一時金の徴収も選択肢の一つとなります。ただし、修繕金が不足しているのに無理をしてまで修繕工事を行う必要はありません。取り急ぎ緊急度の高い修繕のみ行い、十分な修繕金が集まってから工事を行うのも良いでしょう。

その際、長期修繕計画の見直しを行っておくことが大切です。長期修繕計画の見直しを実施して工事費用が計画と大きく乖離する場合は、将来的な資金不足を招く可能性があります。計画を見直し、長期的な視点で資金管理を行いましょう。

6. 大規模修繕工事の施工会社を選定する

大規模修繕工事の品質と費用は、選んだ施工会社によっても大きく変わります。

適切な施工会社を選ぶためには、複数の候補から見積もりを取り、比較検討することが重要です。なお、後々のトラブルを避けるため、見積もりの内容に不明点があれば施工会社に確認しておきましょう。

費用だけでなく、施工実績や技術力、過去の施工事例、口コミなどを確認した上で総合的に評価し、信頼できる会社を選ぶことが大切です。

7. 総会決議を実施する

工事の概要が決定したら総会を開催し、修繕の目的や工事内容、期間、費用などを詳細に説明する必要があります。

組合員の理解と協力を得るためには、公平性と透明性を確保した情報提供が必須です。建物診断の結果や、工事の必要性、予算の妥当性、施工会社選定の理由などを明確に伝えましょう。

また総会前の準備では説明会を通じて、組合員の意見を積極的に聞き取り、信頼関係を構築します。工事に対する不安や疑問を解消し、組合員の一人ひとりに納得してもらえば、合意を得やすくなります。スムーズに工事を進行するためにも、丁寧なコミュニケーションを心掛けましょう。

8. 居住者に対して工事説明会を実施する

工事実施の承認後は、居住者への丁寧な説明が不可欠です。工事開始の約1カ月前には工事説明会を開催し、工事内容や注意点を詳細に伝えましょう。

特に、騒音や洗濯物の扱いなど、日常生活への影響は丁寧に説明し、居住者の不安を解消することが重要です。一方的な説明ではなく、質疑応答や意見交換の場を設け、居住者の声に耳を傾けましょう。

説明会で出てきた意見や懸念点は施工会社と共有し、できる限り対応策を検討します。

居住者の理解と協力は、工事を円滑に進める上で欠かせません。信頼関係を築き、協力体制を構築すれば、工事の満足度を高められるでしょう。

9. 契約後に着工する

大規模修繕工事では、工事請負契約の締結が重要な節目です。契約内容を慎重に確認し、管理組合に不利な条項がないかどうかを確かめましょう。もし契約内容から不信感を抱いた場合には、その業者に依頼して良いのかをあらためて検討した方が良いでしょう。

工事期間中は定期的なミーティングを通じて進捗状況を把握し、遅延やクレームがないかを確認します。もちろん、安全管理や防犯体制も重要な確認事項です。また、居住者への広報活動も欠かせません。

万が一、予期せぬ不具合が発生した場合は理事会や監理者、施工会社とで連携し、対応策を検討します。スムーズに工事を進行するためにも、迅速に情報を共有し、調整を行いましょう。

10. 竣工検査を経て引き渡しを受ける

大規模修繕工事では、工事の品質を担保する工程として、工事完了後に竣工検査が行われます。施工箇所を詳細に確認し、工事内容との差異や不具合がないかを徹底的にチェックしましょう。

不備が見つかった場合は速やかに手直しを行い、再度検査を実施しなければなりません。このプロセスを繰り返すことで、工事の品質を確実に高められます。

竣工検査後は、施工会社から「竣工図書」が提出されます。竣工図書は工事の詳細な記録であり、建物のメンテナンスや次回の修繕工事に役立つ資料です。適切に保管しましょう。

大規模修繕工事で把握しておきたい3つのポイント

長期修繕計画を立てるには、大規模修繕工事にかかる費用や期間、実施する頻度を把握することが重要です。マンション管理組合の方は、円滑な修繕のためにポイントを押さえておきましょう。

1. 大規模修繕工事にかかる費用

国土交通省の調査によると、一戸当たりの修繕費用で最も割合が高いのは、100万円~125万円です(※)。ただし、修繕費用はマンションの規模や劣化の度合い、メンテナンス状況によって大きく変動します。上記の目安に収まったからといって必ずしも適正価格だとは言い切れないため、なるべく複数の業者から相見積もりを取った上で判断するようにしましょう。

なお、見積もりを取った結果、修繕積立金が不足するようであれば、無理をしてまで工事を急ぐ必要はありません。施工会社や専門家のアドバイスを受けた上で、修繕時期を見送るのも一つの手です。

区分所有者の負担を軽減し、必要なタイミングで必要な工事を行えるよう、適切な修繕計画を立てるようにしましょう。

※参考:国土交通省.「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」.”≪2≫ マンション大規模修繕工事について”.https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001619430.pdf ,(参照2025-03-29).

2. 大規模修繕工事にかかる期間

一般的に大規模修繕工事にかかる期間は、50戸以下の小規模マンションの場合は2~4カ月が目安です。ただし、期間はマンションの状態や形状、劣化の度合いによって変わるため一概にはいえません。

また工事期間以外に、工事開始までの準備期間も考慮する必要があります。計画策定や見積もり取得、住民説明会など、多くの工程を経て着工に至るため、準備期間として1~2年かける場合も少なくありません。

3. 大規模修繕工事を実施する頻度

国土交通省のガイドラインによると、大規模修繕工事を実施する目安は12〜15年周期とされています。また、大規模修繕の周期は1回目よりも2回目、2回目よりも3回目の方が短くなる傾向にあるようです(※)。

ただし、前述した通り適切な修繕周期はマンションの立地条件や劣化の度合いにより大きく変動します。ガイドラインを鵜呑みにせず、建物の状態や資金状況に応じて柔軟に調整することが大切です。

※参考:国土交通省.「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」.”≪2≫ マンション大規模修繕工事について”.https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001619430.pdf ,(参照2025-03-29).

大規模修繕工事で告知しておくべきこと

大規模修繕工事では、居住者にさまざまな不便や制限が発生します。トラブルを回避するには、事前に周知して理解を得ることが重要です。施工業者などが事前に説明をしてくれる場合も多いですが、万が一の説明漏れがないよう管理組合や修繕委員会からも周知を行っておくと、より確実でしょう。

1. 振動や騒音が発生する場合がある

1つ目は、振動や騒音が発生する場合があることです。修繕工事の内容によっては、工事中に振動や騒音が発生する場合があります。そのため、工事内容やスケジュールをあらかじめ説明し、居住者の理解と協力を得ることが重要です。

2. 塗料や溶剤の使用で臭いが発生する場合がある

2つ目は、塗料や溶剤の使用で臭いが発生する場合があることです。

塗装や防水工事で使用される塗料や溶剤は、独特の臭いを放ち、居住者に不快感を与えることがあります。特に嗅覚が敏感な方は、体調を崩す恐れがあるため、事前説明とスケジュールの共有を忘れずに行いましょう。

塗装工事中は窓の養生が必要となり、窓の開閉が制限される場合があります。この点も併せて周知しておきましょう。

3. バルコニーの使用が制限される

最後に、バルコニーの使用が制限されることです。

バルコニーの壁面塗装や防水工事を行う場合は、乾燥時間を確保するため、昼夜を問わず使用が制限される場合があります。また外壁洗浄や塗装の際に、汚れや塗料が付着することを避けるため、洗濯物の屋外干しを控えてもらうケースもあります。このようなバルコニーの使用制限は、1~2週間続く場合もあるため忘れずに事前の共有を行いましょう。

大規模修繕工事の進め方を把握してマンション運営に役立てよう

大規模修繕工事はマンションの劣化を抑えたり、建物の美観を維持したりするために重要となる工事です。大規模修繕工事は、一般的に、修繕委員会を発足し、建物診断や、基本計画・資金計画の策定から始めます。居住者の理解を得るためにも、大規模修繕工事の進め方や、大まかな費用、期間などをあらかじめ押さえておきましょう。

外装専科では、マンションの状態に基づき、不要な工事は実施しない適正価格での大規模修繕工事を提案しています。大規模修繕工事のパートナー企業を探している管理組合の方は、ぜひお問い合わせください。

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