マンションでは、美観を維持し、劣化の進行を防止するために、周期的に大規模修繕を実施する必要があります。一般には12~15年ごとに行うとされていますが、実際にはマンションの状況に応じて工事周期を延長することも可能です。
本記事では、マンションの大規模修繕に関する基本知識を整理した上で、修繕周期の延ばし方や費用を抑える方法、業者選びのポイントを解説します。管理組合の役員や理事の方が知っておきたい内容をまとめているので、ぜひ参考にしてください。
目次
マンション大規模修繕とは? 2026年に知っておくべき基本と目的
まずは、マンション大規模修繕とはどのような工事か、なぜ必要なのかについて解説します。2026年現在の大規模修繕を取り巻く環境や、修繕積立金に関する問題も知っておきましょう。
マンション大規模修繕とは|外壁・屋上・共用部をまとめて直す計画修繕
大規模修繕とは、経年や外部要因によって生じた建物の劣化や設備の不具合などを修繕する大掛かりな工事のことです。長期修繕計画に基づいて資金を集め、周期的に実施します。不具合が起きるたびに個別で対応する補修とは異なり、大規模修繕の目的は、マンションの美観を維持し性能や機能を回復させることです。
一般的には、共用部を中心にマンションの状態や計画に基づいて以下のような工事を行います。
外壁:下地補修、タイルの張り替え、シーリングの打ち替え、塗装など
鉄部(階段、手すり、扉など):さび落とし、塗装など
バルコニー・屋上:防水層の補修、防水工事など
廊下や階段、エントランスなど共用部:床や壁の補修など
上記以外にも、建物・設備の状態に応じて付随工事を実施することがあります。
なぜ大規模修繕が必要なのか|安全性・資産価値・居住性を守るため
大規模修繕が必要なのは、マンションの安全性を高め、機能性や資産価値を維持するためです。どのようなマンションでも、経年による劣化は避けられません。劣化した部分を放置していると、主に以下のようなリスクが生じます。
外壁の劣化による崩落の危険
外観や設備の老朽化による資産価値の低下
居住性の低下による入居者満足度の低下
外壁や屋根のヒビ割れ、欠けなどの傷みを放置すると、内部に空気や水が入り込んで劣化がどんどん進行し、やがて崩落などの危険を招きます。外観や設備の劣化が進めばマンションの資産価値が落ちるため、将来売却する際にも不利になりやすいでしょう。
そのため、大規模修繕を行う法的な義務はないものの、実質的には避けられない工事といえます。
2026年の大規模修繕を取り巻く環境|建築費高騰と修繕積立金不足
2026年以降、マンションの大規模修繕は実際の工事費が計画を大幅に上回る恐れがあるといわれています。近年、戦争による世界的な物流の停滞や燃料費の国際的な上昇、円安の進行といったさまざまな要因が絡み、建築資材が高騰しているためです。
また建築業界は以前から慢性的な人手不足にあり、人件費も上昇しています。長期修繕計画を立てた当初の想定予算では対応しにくくなっており、計画的に積み立ててきたにもかかわらず、修繕資金の不足に頭を悩ませている管理組合の役員や理事も多いでしょう。
実際、国土交通省が実施した令和5年度の調査(※)では、以下のような結果が出ています。
現在の積立額が計画に比べ不足しているマンション:36.6%
不足割合が20%を超えるマンション:11.7%
修繕積立金の値上げや計画見直しが必要になるマンションも増えています。
※参考:国土交通省.「Ⅱ 令和5年度マンション総合調査結果」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001750161.pdf ,(参照2026-04-21).
費用はどこから出る?修繕積立金の仕組みと構造的問題
大規模修繕は足場を組んで行う大掛かりな工事のため、費用も高額です。通常、修繕費用は必要なときに住民から一括で徴収するのではなく、毎月一定額を集めて積み立てる方式が採られます。国土交通省の調査によると、修繕積立金の月額平均は1万3,378円(※)です。
積立方式は以下のいずれかが採用されます。
均等積立方式:修繕費の総額を均等に割り、毎月一定額を積み立てる
段階増額方式:5年ごとなどに段階的に積立額を引き上げる
現在主流となっているのは段階増額方式です。段階増額方式には、新築時の月額負担を抑えられるというメリットがあります。
ただし、値上げのタイミングで住民間での合意が得られず、思うように増額できなかったり、建築費用の上昇が起きたりして、計画通りに資金が集まらないケースも増えています。
※参考:国土交通省.「Ⅱ 令和5年度マンション総合調査結果」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001750161.pdf ,(参照2026-04-21).
12年周期はもう古い?修繕積立金不足を救う「周期延長」という考え方
従来、マンションの大規模修繕は12年周期で語られることが多くありました。ただし、実際の修繕時期は建物の状態や使用材料、修繕回数によって異なります。ここでは、12年周期が一般化した背景と、周期延長を検討する際の考え方を解説します。
なぜ「12年周期」が定説になったのか
「マンション大規模修繕は12年周期で実施するべき」との考えが定説となったのには、以下のような背景があります。
国土交通省のガイドラインでは、外壁補修・防水・仮設など主要項目に12~15年程度の修繕周期が多く設定されている(※1)
定期報告制度の対象建築物では、おおむね10年に一度、外壁の全面的な打診等が必要になる(※2)
建築研究所の研究では、外装塗り仕上げ材や屋上防水の耐用年数の例として10年〜十数年程度(※3)のものが示されている
実際には、12年ごとに行うといった法的な決まりはありません。傷みがほとんどないなど、マンションの状況によっては大規模修繕の時期を延長できます。マンションにとって適切な時期を見定めて実施することが大切です。
※1参考:国土交通省.「長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン 長期修繕計画作成ガイドラインコメント」
”P80”.https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747006.pdf ,(2024-06)
※2参考:国土交通省.「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000161.html ,(参照2026-04-22).
※3参考:国土交通省「持続可能社会における既存共同住宅ストックの再生に向けた勉強会」
”P29”.https://www.mlit.go.jp/common/000227563.pdf ,(2026-04-25).
近年増えている「15年〜18年周期」という新しい考え方
近年は、建物の状態や材料性能を踏まえ、15年超の周期を検討する事例もあります。先述の通り、もともと大規模修繕は必ずしも12年ごとに行う必要はなく、建物の状態によっては延長も可能でした。高耐久材料の採用状況などによっては延長余地があると考えられます。
大規模修繕の延長には、以下のようなメリットがあります。
適切に延長できれば工事の回数を減らせ、トータルコストを削減できる
必要な修繕のみ行え、修繕積立金を有効活用できる
修繕資金をためる期間が長くなり、住民の負担が減る
ただし、大規模修繕の周期を延長することで建物に生じた小さな亀裂やヒビを見逃し、気付かれないまま劣化が進行するリスクがある点には注意が必要です。
周期延長を実現するために必要な点検・修繕計画
大規模修繕の周期を延長した場合、気付かないまま建物の劣化が進む事態を避けるために有効なのが、専門家による定期的な調査・診断です。定期報告制度の対象建築物では、法定調査を実施しつつ、長期修繕計画を5年程度ごとに見直すことが重要です。その際は建物診断の結果を踏まえ、必要に応じて外壁調査や打診、赤外線調査などを活用します。
調査をすることで「今は修繕しなくても問題ない箇所」「部分的に修繕が必要な箇所」を切り分けることが可能です。必要な箇所にのみ修繕を施せば、安心して大規模修繕を延長できるでしょう。
ただし周期の延長は理事会だけで一方的に決めず、管理組合で合意形成を図り、住民の理解を得ることが不可欠です。一方的な決定では、住民の反発や不安を招く可能性があります。
長期修繕計画を見直す際は、以下の手順で進めましょう。
劣化診断:建物の部位ごとに劣化度を点検し、修繕の必要性を判断する
計画変更:診断結果を踏まえて長期修繕計画や積立金計画を見直す
住民合意:見直し内容を説明し、管理組合で合意形成を図る
管理会社任せはなぜ高い?中間マージンを抑えてコストを削る方法
大規模修繕については、管理会社に任せているという管理組合も多いでしょう。ただし、発注先の選定や工事の取りまとめを一任すると、費用が高額になりやすいという懸念があります。
ここでは、管理会社任せにすると高額になりやすい理由や、コストを削減する方法を解説します。
管理会社任せの大規模修繕が高くなりやすい理由
大規模修繕の計画や施工会社選びの際に管理会社を経由すると費用が高くなりやすいのは、以下のような問題があるためです。
建築業界で当然となっている元請け・下請け・孫請けの多重構造による中間マージンの積み上がり
管理会社が発注先の選定や工事の取りまとめに深く関与する場合の、利益相反やコスト増大の恐れ
建築業界では工事の二次請け・三次請けが常態化しており、発注経路が多層化すると、その分だけ中間コストが発生しやすくなります。また管理会社は本来管理組合の利益を踏まえて行動する立場ですが、元請けになれば、紹介料などとしてマージンを取ることが可能です。結果として、工事費用が割高になる恐れがあります。
管理組合は、管理会社が出した見積もり金額をそのまま了承するのではなく、金額が適正かどうかを見極めることが大切です。
中間マージンを減らすには「直接発注」が有効
修繕費を抑えるためには、管理会社を通さずに施工会社に直接発注する方式が有効です。信頼できる業者に直接発注できれば、以下のようなメリットがあります。
中間マージンをなくし、同じ工事で費用を削減できる
不明点があった場合、施工会社に直接確認できるため、不要な工事を排除しやすい
細かな要望を施工会社に直接伝えられるため、行き違いが発生しにくい
管理組合が施工体制を確認しやすく、透明性を確保できる
直接発注方式を取る場合は、以下の手順で進めましょう。
管理会社との委託契約を確認:修繕工事の発注業務が含まれているか確かめる
劣化診断を実施:必要な修繕を整理する
複数社の見積もりを依頼:3〜4社から見積もりを取り比較する
施工会社を決定する:価格・実績・担当者の対応など総合的に判断して決定する
なお施工会社に直接発注した場合でも、入居者への説明や工事日程の調整などの対応を管理会社に任せられれば、管理組合の負担を減らせます。
「安かろう悪かろう」を回避!品質を維持しながらコストを抑える業者選び
納得のいく大規模修繕を行うためには、業者選びが大切です。工事代金の安さだけで選ばず、実績や保証内容などを確認し、信頼できる業者を選ぶことが欠かせません。
ここでは、安過ぎる業者に依頼するリスクや業者選びのポイントなどについて解説します。
極端に安い見積もりのリスクを見抜く
相見積もりを取った際、相場より極端に安い価格を提示された場合は注意が必要です。工事費が安過ぎる場合、以下のようなケースがあるためです。
追加費用が後からどんどん発生する
下地補修を省く、塗料を薄める、塗装回数を減らすなどの手抜き工事をされる
工事後に不具合があっても保証されない
見積書に詳細な内訳がなく「○○工事一式」などで示されている場合、後から一式に含まれない部品が必要になったなどとして、追加費用を請求される可能性があります。例えば下地処理であれば「ヒビ割れ補修○○m」など、箇所や予定数量、単価が記載されているかを確認しましょう。
中には必要な足場だけを組むなど、無駄を徹底して省くことで低価格を実現している良心的な業者もあります。安いというだけで警戒せず、低価格の根拠を見極めることが大切です。
実績・資格・保証内容から信頼できる業者を選ぶ
納得のいく工事をしてもらうためには、信頼できる施工会社を選ぶことが欠かせません。信頼できるか見極めるポイントは以下の通りです。
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チェックポイント |
注意点 |
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豊富な施工実績があるか |
対象マンションと同規模の物件の経験があることが大事 |
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必要な建設業許可を有しているか |
マンション大規模修繕のような一定規模以上の工事では、原則として必要な許可の有無を確認 |
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ISO認証などの資格があるか |
品質管理体制を確認する |
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保証期間・保証やアフターサービスの内容は十分か |
保証期間や保証範囲は工事項目や契約内容によって異なるため、書面で確認する |
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担当者の説明や対応は丁寧か |
分かりやすく説明してくれるか 質問への返事が明確で迅速か |
同じような規模のマンションでの施工実績がある施工会社ほど、ノウハウが豊富で適切な対応が期待できます。保証内容は各社で異なるため、不具合が発生したらどこまで対応してくれるのか、保証書を発行してくれるのかなども含めて確かめましょう。
適正価格で依頼するために複数社の見積もりを比較する
適正価格を把握するためには、少なくとも3~4社から相見積もりを取ることが基本です。同じ条件でなければ比較しづらいため、必要な工事の条件を示した共通仕様書を作成し、各社に提示するとよいでしょう。
共通仕様書通りに見積もりを作成してほしいと依頼すれば、同一条件の見積書がそろいます。内訳を確認するために、見積書には「工事一式」などではなく、項目ごとの数量・単価・金額を明記してもらいましょう。
ただし、完全に共通仕様書通りに見積もりを出してもらうと、割高になる場合があります。例えば最初から「足場を組む」と指定した場合、コストが安いブランコ工法で対応できる場合であっても、業者は提示できません。そのため「コストダウンにつながる代替案や材料の提案であれば歓迎する」との旨を伝えておくのがおすすめです。
さらには、価格だけに着目するのではなく、提案内容や担当者の対応姿勢も含めて、総合的に判断することが必要です。
まとめ
大規模修繕は、マンションの美観や機能性、資産価値を維持するために欠かせません。とはいえ、建築資材や人件費が高騰しており、資金不足に悩んでいるマンション管理組合の役員や理事の方も多いでしょう。
コストを削減し、負担を減らすためには以下の考え方が有効です。
12年周期にこだわり過ぎず、建物の状態に応じて期間の延長を検討する
施工会社に直接発注する
相見積もりを取り、適正価格を把握する
管理会社に丸投げせず、管理組合が主体となって動くことで修繕費用を削減することが可能です。
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