2021年1月18日

第5回 大規模修繕工事での共通仕様書とは? その2

「大規模修繕かけこみ寺」外装専科の伊藤岳副社長に、業界リポーターNAKA氏がマンションの大規模修繕工事に関する問題点と改善策を聞く連載シリーズの第5回。

「共通仕様書」は誰にとって利点があるのか?

ーーお話を聞いていると、マンションの管理組合はよほどしっかりと自分たちのマンションの状態について、調べておかなければならないですね。

伊藤 ︎ご自分たちの財産ですから、やはり人任せではなく素人ながらも調べておくことが必要でしょう。

ーーそれにつけても「共通仕様書」は便利なようで、逆に高額な修繕費となる可能性があるというのは本末転倒です。ですが、なぜ管理会社や設計コンサルタントは顧客であるマンションに必要以上の修繕費になるような共通仕様書を取り入れるのですか?

伊藤 ︎まず第一に、管理会社などにとって共通仕様書は便利なこと、第二に修繕費を高めに見積もることができることで、それがいちばん大きな理由だと思います。つまり、管理会社や設計コンサルタントにとって修繕費が高くなるとおのずと手数料が増えるという事でしょうか。

 大規模修繕工事については管理会社と管理組合は利益相反の関係であることを認識された方がよいのではないでしょうか。

 最近では修繕積立金残高と、工事見積もり金額が同額となるような共通仕様書をよく見かけます

ーーそれじゃあ、管理会社や設計コンサルタントはマンションの住人にとって獅子身中の虫、となってしまいますね。

伊藤 ︎まぁ、すべての管理会社などがそうだとは言いませんが、現実にはそういう傾向があります。

 とにかく、共通仕様書はどのマンションでも使えるように平均化した内容項目が多いため、見積もりはどうしても高くなります。そんな見積もりを提示された管理組合は、その項目が必要か不必要かの判断をしなければなりません。きちんと建物診断がなされ、それを把握している管理組合であれば項目ごとのチェックも可能でしょうが、管理会社などに丸投げしている管理組合であれば納得せざるを得ませんね。

ーーなるほど、公平で合理的に見える「共通仕様書」ですが、その裏側にはいまおっしゃったような欠点があるんですね。

伊藤 ︎はい、だからあえて強い言葉で「落とし穴」があると指摘したわけです。何度も言いますが、共通仕様書は確かに見積価格の比較ができる便利さはあります。しかし、それが当該マンションの劣化状態に即していないとすれば、無駄な支出を強いられることになります。

 そう考えると、共通仕様書による見積もりとは、マンション側にとってのメリットよりも、修繕費が高くなるというデメリットのほうが大きくなるんじゃないでしょうか。

 この問題を簡単に整理しておきましょう。共通仕様書は修繕費の金額が比較可能という利点はありますが、反面として、

・共通仕様書は平均化した項目のため修繕費が高騰

・修繕費の高騰はマンションにとって不利益

・修繕費の高騰により管理会社や設計コンサルタントの手数料が増大

・修繕費の高騰は工事業者にとって仕事量が増えるため好都合

となるわけです。

ーーでは現実問題、マンションとしてどのように見積もりを取ればいいんでしょうか?

伊藤 ︎一般的には管理会社や設計コンサルタントの見積もりとは別に、修繕工事に詳しい施工業者に別途見積もりを依頼すべきです。例えば、次のようなやり方ですね。

・マンションサイドに立つ設計コンサルタントや工事業者に直接建物を調査してもらい、工事内容や工事方法、工事金額などを記入した見積もりを出してもらう。

・その見積もりを、管理会社の推薦した設計コンサルタントの見積もりとコンペ形式で競わせる。

・それにより、どちらの見積もりが管理組合にとって合理的かつメリットがあるかがチェックできる。

 管理会社からはおそらくプレッシャーがあるでしょうが、それを跳ね除けてこうした方式を管理組合がきちんと行えれば、割高見積もりは防げると思います。