2020年9月9日

国交省が提示した大規模修繕工事実態調査

「大規模修繕かけこみ寺」外装専科の伊藤岳副社長に、業界リポーターNAKA氏がマンションの大規模修繕工事に関する問題点と改善策を聞く連載シリーズの第3回。

一部の管理会社が提示する過大な「大規模修繕工事」見積もり

ーー伊藤さんは前回、設計コンサルタント以外に、管理会社についても問題があると述べています。もう少し詳しくお話しください。

伊藤 まず、国交省が指摘した、設計コンサルタントのバックマージンについて実態を示した新聞記事がありますので紹介しておきましょう。朝日新聞の記事(2018年5月12日朝刊34面)ですが、関西のある工事業者が、「この20数年に100件近い修繕工事を手がけてきたが、そのほとんどでコンサルタントにリベートを払っていた」と実態を明らかにしました。

 また、一部の管理会社についてですが、管理会社は積立金を管理しているので、当該マンションの修繕積立金の額を承知しています。ですので、その額に見合う修繕工事の見積もりを施工業者に提出させてきたことは業界の中では周知の事実なんですね。

ーー朝日新聞の記事は自分も読んだ記憶があります。そのときの感想は「やはり、業界ぐるみなのかなぁ」というものでした。積立金にしても、マンションの管理組合は、コンサルはもちろん、管理会社を信頼しているでしょうから、なんの不信も持たずに管理会社に積立金を管理してもらっている。その範囲内で修繕工事の相談をするような気がします。

伊藤 ︎マンションの築年数や経年の劣化具合によって必要な修繕工事を提案してもらえればいいのですが、管理会社も儲けたいんでしょう、不必要な工事まで組み込んで見積もるわけです。つまり、必要でもない工事まで組み入れるんですから、管理会社が提案する大掛かりな工事には無駄が多いんじゃないか。

 もちろん、修繕工事は必要ですよ。ですが、建物の状況によっては「大規模修繕工事」ではなく、「小規模修繕工事」でもいいわけなんですね。

 こうした悪弊を防ぐには、管理会社や設計コンサルタントの推薦する工事業者の見積もりとは別に、修繕工事に詳しい工事業者に建物診断をしてもらい、実際に建物がどのくらい傷んでいるかなどを調べたほうがいいかもしれません。そのうえで別途に修繕工事費の見積りを提出してもらう。そうすればコンペ方式によって工事業者を決められますね。

 まぁ、不必要な工事を必要とするのは無駄もいいところですし、修繕工事はマンションの実態にあった工事方法を考えるべきでしょう。何より今は、「修繕積立金では修繕工事を賄えない」という深刻な財源不足の悩みを抱えるマンション管理組合が多いのが現実です。マンション管理組合は修繕工事の実態について広く情報を収集して無駄な工事を省き、居住するマンションの状況に即した工事を行う必要に迫られていると言えるんじゃないでしょうか。

ーー長年、マンションの修繕工事を取材してきた身としても、なにか溜め息が出るような話です。どんなも建物でも経年劣化するのは避けられません。ですから、マンションのメンテナンスは建物の保持のために必要不可欠な工事です。マンションの管理組合もそこをよく理解したうえで、自分たちの居住するマンションがどの程度劣化しているのかなどを把握する努力が求められているのでしょうね。

  ただ、一般的なマンションには平均的な「工事どき」という蓋然性があると思います。外装専科さんでもそのあたりの平均値をチェックしていますが、国交省では築何年ほどで修繕工事をしなければならないと考えているのですか?

伊藤 ︎実際の修繕工事はだいたい築13〜16年としていますが、これについては国交省がデータを出しています。ただし、修繕工事の推奨は築12年ほどですね。

 国交省データについては一部抜粋しますが、別表にして掲載しておきましょう。また、「マンション大規模修繕工事に関する実態調査について」としてPDFファイルを作成しているので、それも参照にしてください。

 こうした国交省のデータにより居住するマンションの修繕をいつごろすべきなのか、どのくらいの規模で行うか、修繕費はどのくらいかかるか、などの参考にすることが望ましいでしょう。

ーーなるほど、これは参考になりますね。では、次回からは実態に即したマンション大規模修繕工事に関する問題点や改善点などをお聞きしていくことにします。

 

国土交通省調査データ

【大規模修繕工事築年数】

1回目=築13〜16年前後 平均14.3年

2回目=築26〜33年前後 平均29.5年

3回目以上=築37〜45年前後 平均40.7年

【大規模修繕工事内訳上位順】

1回目=①仮設工事②外壁塗装③床防水④屋根防水⑤外壁タイル⑥鉄部等塗装他

2回目=①仮設工事②外壁塗装③床防水④屋根防水⑤給水設備⑥外壁タイル⑦鉄部等塗装他

3回目以上=①外壁塗装②仮設工事③建物・金物等④屋根防水⑤床防水⑥鉄部等塗装⑦外壁タイル他

【床面積平均工事費/㎡】

1回目=8,483.7円〜13,426.4円 平均1万3095.9円

2回目=9,144.7円〜15,538.8円 平均1万4634.9円

3回目以上=7,530.8円〜11,931.0円 平均1万1931.0円

【1戸あたり平均修繕費】

1回目=73.5万円〜117.9万円 平均100.0万円

2回目=76.2万円〜119.8万円 平均97.9万円

3回目以上=55.1万円〜105.7万円 平均80.9万円

【設計コンサルタント業務内訳】

1回目=①工事監理42.1%(うち設備関係6.2%)②設計28.2%(うち設備関係5.2%)③調査・診断16.2%(うち設備関係0.7%)④施工会社選定への協力9.2%⑤長期修繕計画の見直し3.8%⑤その他0.5%

2回目=①工事監理40.0%(うち設備関係1.1%)②設計29.8%(うち設備関係1.0%)③調査・診断15.4%(うち設備関係0.3%)④施工会社選定への協力7.7%⑤長期修繕計画の見直し5.1%⑤その他1.9%

3回目以上=①工事監理47.0%(うち設備関係8.6%)②設計28.0%(うち設備関係5.1%)③調査・診断14.4%(うち設備関係0.9%)④施工会社選定への協力7.7%⑤長期修繕計画の見直し1.9%⑤その他1.0%