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大規模修繕の豆知識

マンションの大規模修繕の足場費用はどれくらい? 安く抑えるポイントも解説

マンションの大規模修繕では、高所作業が発生する場合が多いです。そのため、作業員の安全確保はもちろん、作業をスムーズに進めるためにも足場は欠かせません。

 

ただし、よく使われる組立式の足場はコストがかさみやすく、全体の修繕費に大きく影響することがあります。足場は必ずしも組立式のものを採用する必要はありません。状況に合った足場を選び、無駄なコストを削減しましょう。

 

本記事では、マンションの大規模修繕における足場の役割や費用相場、費用を抑えるポイントについて解説します。大規模修繕に向けた計画を策定する際の参考にしてください。

 

マンションの大規模修繕における足場の必要性 

 

冒頭でも申し上げた通り、マンションの大規模修繕では、多くの場合足場の設置が必要とされます。高所での作業が中心となるため、まずは作業員の安全を守るための環境整備が最優先事項となるからです。

 

また、足場があることで作業効率も大きく向上します。例えば、外壁の塗装や補修を行う際、スムーズに移動できる足場があれば、無理な姿勢を取ることなく作業が行え、工期の短縮や仕上がりの精度にもつながります。

 

さらに、足場には塗料や粉じんの飛散を防ぐメッシュシートが張られます。これにより、周辺住民や通行人への影響を最小限に抑える役割も果たします。

 

このように、足場は大規模修繕での安全性や効率を高める他、周辺住民や通行人とのトラブルを防ぐ上で重要な存在です。

 

マンションの大規模修繕の足場費用はどれくらい? 

 

足場設置にかかる費用は、大規模修繕工事全体の2~3割を占めることが多く、決して小さな金額ではありません。管理組合にとっては、費用の見積もりや予算計画を立てる上でもっとも注目すべき項目の一つといえます。

 

費用の目安としては、足場の架面積1㎡当たり700~1,500円程度が相場です。金額に幅があるのは、使用される足場の種類(枠組足場・単管足場・くさび式足場など)や設置条件によって単価が異なるためです。

 

また、以下のような要因も費用に大きく影響します。

 

  • 建物の高さがあるほど、安全確保のために費用が高くなる
  • 隣接する建物との距離が近い場合、特殊な足場設計が必要になる
  • 駐車場や植栽など障害物が多いと、設置に手間がかかりコストが上がる

 

さらに、近年では資材価格や人件費の高騰も影響しており、過去の修繕費用と比較しても上昇傾向にあります。そのため、単純に「前回と同じ規模だから同じくらい」とは判断できない点に注意が必要です。

 

足場のコストは、安全性や工事のスムーズさと直結するため、単価だけで比較するのではなく、施工実績や管理体制も含めて業者を選定することが大切です。

 

マンションの大規模修繕で使われる足場の種類と特徴 

 

マンションの大規模修繕では、建物の構造や作業内容に応じてさまざまな種類の足場が使い分けられます。

 

ここでは主要な足場について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。足場の選定は工事全体の品質や費用に大きく関わるため、管理組合としても基本的な知識を持っておくと良いでしょう。

 

枠組み足場

 

枠組み足場は、鉄製の部材を組み合わせて構築するタイプの足場で、もっとも一般的に使われています。枠状のフレームを積み上げるシンプルな構造でありながら強度が高く、安定性に優れているのが特徴です。

 

この足場は中~高層の建物に向いており、特に10階建て以上のマンションでは多く採用されています。作業空間が広く確保でき、移動や作業がしやすいため、効率的に工事を進めることができます。ただし、他の足場と比較するとやや単価が高めになる傾向がある点には注意が必要です。

 

単管ブラケット足場

 

単管足場は、鉄パイプ(単管)とクランプと呼ばれる金具を組み合わせて作る足場です。構造がシンプルで材料費も抑えられるため、比較的コストを安く済ませられるのが大きな利点です。

 

一方で、枠組み足場と比べると構造的な強度はやや劣り、揺れが発生しやすい傾向があります。高所作業や長期間の工事にはあまり向かないため、小規模な修繕や短期の工事で使用されるケースが多くなっています。

 

また、設置スペースが限られている現場や、複雑な形状の建物にも対応しやすいという利点があります。ただし、安全性の確保には十分な配慮が必要であり、使用には専門業者による慎重な管理が求められます。

 

コスト重視の現場では有力な選択肢ですが、適用範囲には限りがあるため、施工規模とのバランスを見極めることが重要です。

 

くさび式足場

 

くさび式足場は、支柱に設けられた溝に、くさび付きの部材をハンマーで打ち込んで固定するタイプの足場です。組立・解体が比較的簡単で、工期短縮およびコストを削減したい現場に向いています。

 

また、部材同士の結合がしっかりしており、作業の安定性にも優れているため、中層階程度までのマンションでは広く使用されています。軽量な部材で構成されていることから、運搬や設置の負担が少ないという点も評価されています。

 

ただし、足場の高さや施工範囲によっては他の足場が適している場合もあるため、工事内容に応じた柔軟な選定が必要です。

 

 

ブランコ足場

 

ブランコ足場は、建物の屋上からロープを垂らし、作業員が吊り下がった状態で作業を行う特殊な方法です。一般的な足場を組まずに作業できるため、仮設資材の費用が大幅に削減されるのが最大のメリットです。

 

特に、高所での軽微な補修や、周囲に十分な足場設置スペースがない狭小地では有効な手段となります。また、外観を大きく覆うことがないため、住民や近隣への圧迫感が少ないという点も特徴です。

 

一方で、ブランコ足場は特有の技術を要する作業であるため、対応できる業者が限られる点に注意が必要です。

 

大規模修繕の足場費用を抑える方法 

 

足場費用は、大規模修繕費用全体の2~3割を占めると言われており、コスト面での大きなウェイトを占めます。工事の内容やマンションの規模によっては、大きな金額の差が生まれることもあります。「足場費用を少しでも抑えたい」というのは、多くの管理組合にとって共通の悩みでしょう。

では、どうすればその費用を適正な範囲に収めることができるのでしょうか。ここでは3つのポイントに絞って、足場費用を抑えるための工夫や検討事項を紹介していきます。どれも現実的に取り入れやすい方法ですので、ぜひ参考にしてください。

 

相見積もりを取る

 

足場費用を抑える上で、最初に取り組みたいのが「相見積もりの取得」です。

同じ工事内容であっても、業者ごとに見積もりの金額や算出方法は大きく異なります。必ず3社程度の業者から見積もりを取り、比較検討することが基本です。

 

相場を知らないまま1社の見積もりだけで契約を進めてしまうと、必要以上のコストをかけてしまうリスクがあります。特に「一括発注で全てお任せ」となると、足場費用の内訳が見えにくくなる傾向があります。

 

注意したいのは、価格だけにとらわれず、以下の点にも注目して比較することです。

 

  • 工事項目や単価の記載が明確か
  • 担当者の説明が丁寧で質問に対する回答が具体的か
  • 工期や安全管理の方針がしっかりしているか

 

あまりに安過ぎる見積もりには、必要な作業が省略されている可能性もあるため、慎重に見極めることが重要です。相見積もりは、適正価格を把握するための有効な手段といえます。

 

足場を自社保有している業者を選ぶ

 

業者選定において、足場を自社で保有しているかどうかも、費用を左右する重要なポイントです。足場を自社保有している業者に依頼すると、レンタル業者への中間マージンや外注による組立費用が発生せず、その分コストが抑えられる可能性があります。

 

また、自社で保有していれば以下のような利点もあります。

 

  • 工期の調整が柔軟に対応できる
  • 緊急時でも自社の資材で迅速に対応できる
  • 工事全体の管理が一元化されており連携がスムーズ

 

一方で、自社保有であっても全ての現場に最適とは限りません。業者の技術力や管理体制も含めて総合的に判断する必要があります。

 

見極めのポイントとしては、Webサイトやパンフレットに「自社保有」「自社施工」と明記されているかどうか、営業担当者がそのメリットを具体的に説明できるかといった点が参考になります。

 

コストと品質のバランスを考慮しながら、適切な業者選びを行いましょう。

 

組立足場以外の方法を検討する

 

足場費用を抑えるもう一つのアプローチとして、一般的な組立足場ではなく「無足場工法」を検討するという選択肢もあります。無足場工法とは、建物の屋上や構造体を利用して吊り下げ型の足場やゴンドラを使う方法で、仮設資材の量が大幅に削減できるのが特長です。

 

例えば、吊り足場は高層階の外壁補修などで活用されており、下部に障害物がある現場でも対応可能です。

ゴンドラは上下に可動するため、外壁塗装やシーリング工事など、作業効率を高めやすいというメリットがあります。

 

こうした工法は、仮設組立の手間や資材コストを省けることから、結果的に費用を抑えやすくなる可能性があります。

 

ただし、無足場工法には以下のような制約もあります。

 

  • 建物の形状や構造により採用できないケースがある
  • 対応できる業者が限られている
  • 安全面で高い技術と管理が求められる

 

そのため、採用の可否は業者に現地調査を依頼し、実際に提案を受けてから判断する必要があります。選択肢の一つとして検討することで、足場費用を見直すきっかけになるでしょう。

 

マンションの大規模修繕で足場を利用する場合の注意点 

 

足場は大規模修繕において安全性や作業効率の確保に欠かせない存在である一方、足場があることで普段とは異なるリスクが生じることもあります。

 

例えば、足場を使って外部からマンションに侵入されるといった防犯面の懸念や、工事中の騒音や日照不足などの生活への一時的な影響が考えられます。こうしたリスクは、あらかじめ対策を講じておくことで、未然に防ぐことが可能です。

 

ここでは、足場設置期間中に管理組合として気を付けるべきポイントを紹介します。適切な対策によって、住民の安心と工事の円滑な進行を両立させましょう。

 

工事中の防犯を徹底する

 

足場の設置中は、建物の外壁全体が囲まれ、メッシュシートで覆われることが一般的です。これにより外部からの視認性が下がり、空き巣や不審者の侵入リスクが高まることがあります。

 

足場を利用してベランダや窓から侵入する犯罪も考えられるため、マンションの住民全員で防犯意識を高めておくことが重要です。管理組合からは、以下のような対策を取ると良いでしょう。

 

  • 窓や玄関の施錠を日中も徹底するよう呼びかける
  • 郵便物を小まめに回収するよう住民に呼びかける
  • オートロックや防犯カメラの設置・点検を実施する
  • 夜間照明を増設し、足場周辺の視認性を確保する

 

また、定期的に掲示板やメールなどを通じて防犯情報を周知することで、住民の意識向上につながります。足場設置が原因のトラブルを防ぐには、住民一人ひとりの協力も欠かせません。

 

居住者や周辺住民への周知を行っておく

 

足場の組立・解体時には、金属音や振動が発生しやすくなります。さらに、メッシュシートで覆われることで、部屋の日当たりや風通しが一時的に損なわれる場合もあります。

 

こうした影響を最小限にとどめるためには、事前の丁寧な周知が不可欠です。居住者や近隣住民に対して、以下のような方法で工事情報を伝えましょう。

 

  • エントランスや掲示板への掲示物の掲出
  • 工事案内文の配布や、ポスト投函による告知
  • 管理アプリやメールでのスケジュール共有

 

また、共用部の一時的な利用制限がある場合は、その対象範囲や期間を明確に示すことが重要です。緊急時の連絡先や窓口も併せて記載しておくと、万一の際も迅速な対応が可能になります。

 

理解と協力を得るためには、情報を分かりやすく伝える姿勢が不可欠です。トラブルを防ぎ、安心して工事を進めるための土台づくりとして、周知活動はしっかり行いましょう。

 

足場工事の適切な費用を把握しておこう

 

マンションの大規模修繕では、足場の設置が安全性や工事効率の確保に不可欠です。その一方で、工事全体の中でも大きな費用割合を占めるため、適正な見積もりと費用感の把握が非常に重要になります。

 

本記事では、代表的な足場の種類とそれぞれの特徴、費用相場、さらにはコストを抑えるための工夫について解説してきました。

 

  • 足場費用は工事費全体の2~3割が目安
  • 種類や現場条件によって費用は大きく変動する
  • 相見積もりや無足場工法の検討など、工夫の余地がある

 

とはいえ、足場の選定や見積もり精査には専門的な知見が必要です。費用だけで判断せず、実績や説明力のある業者に相談することが、納得のいく修繕につながります。

 

外装専科では、ブランコやゴンドラといった無足場工法を中心に、物件の規模や立地に合わせた足場の提案や、明瞭な見積もりによる丁寧な説明を行っています。マンションの大規模修繕を検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。