2021年3月9日

第6回 修繕積立金を考える? その1

「大規模修繕かけこみ寺」外装専科の伊藤岳副社長に、業界リポーターNAKA氏がマンションの大規模修繕工事に関する問題点と改善策を聞く連載シリーズの第6回。

修繕積立金はなぜ必要なのか?

ーーさて、これまで「大規模修繕が社会的問題になる理由」「国土交通省が設計コンサルタントの不適切を指摘」「国土交通省が示した大規模修繕工事の実態調査」「大規模修繕工事の共通仕様書問題」についてお話をいただきました。今回はある意味、もっとも基本的なことかもしれませんが「修繕積立金」について伺っていきたいと思います。

 まず、いったい積立修繕金とはなんのためにあるのでしょうか?

伊藤 ︎当然ですが、マンションであれどんな建物であれ、年数が経てば劣化します。そのままにしておけばスラム化するのは避けられません。とすれば、ある時期にマンション生活を快適に過ごす、あるいは資産価値の維持や向上になんらかの補修が必要となるのは目に見えています。

ところが、「建物が傷んだから大変だ」と修繕するようではあまりにも泥縄式だし、修繕金として入居者にお金の拠出を依頼しても多額になりかねないので集まらない可能性が高いでしょう。

ですから、そうした事態に備えるには、マンションへの入居当初から、将来予想される修繕を見込んで長期的な修繕計画を策定しておくことが合理的になりますね。

では、計画の中のもっとも重要なことは何か、という問題ですが、これは修繕費、つまりお金となることが明らかです。そこで修繕はいつごろになるのか、どのくらいの費用がかかるのかを予測し、入居者あたり毎月いくら徴収するかを決める必要があるわけです。それが「修繕積立金」ということです。

ーーなるほど、それは当然ですね。マンションの経年劣化や自然災害での予測できない損傷などが生じる可能性があるわけですから、事前にそれらに対して手当をしておく必要があるのは十分に理解できます。

では、修繕積立金はどのような方法で徴収されるのですか?

伊藤 ︎「修繕積立金」といっても、2通りの方法があるようです。「均等積立方式」「段階増額積立方式」と呼ばれています。

ーー「均等積立方式」と「段階増額積立方式」の2つの方法があるのですか。それはどんな方法でしょう?

伊藤 ︎まず「均等積立方式」ですが、これは文字通り毎月均等額を入居者から徴収し、積み立てていく方法です。だいたい大規模修繕は12~15年ぐらいで行われるので、そのときに修繕積立金でカバーできる額を想定して均等割にするわけです。

この方法ですと定額負担なので、入居者も予定に組み込めますから未払いや滞納リスクが低くなります。

ただし、物価の高騰やインフレなどで当初予定の積立金では不足する場合も考えられます。そのため5年ほどで積立額を再検討し、不足が見込まれる場合は増額を求められる可能性があります。

「段階増額積立方式」は、初めの修繕積立金を低く抑え、数年ごとに増額していく方法です。ですから段階増額ですね。

この方法は入居当初では修繕積立金が安価という利点がありますが、最終的にはかなりの徴収額になるので、入居者の経済状態によっては積み立てが厳しくなることもあり得ます。また、増額金に関しては入居者の合意が必要となるため、そこで揉めることがあるわけです。

その意味では、「均等積立方式」のほうが入居者の理解を得られやすく、また徴収時に問題の生じる事態が少ないため、この方法を採用するマンションが多いようです。

いずれにしろ、諸般の事情で積立金額を上げなくならなくなったときに、どのように合意形成していくかについて、マンションの重大な問題となるのは避けられないことでしょうね。

ーーやはり、お金を集めるというのはなかなか大変ですね。ところで、大規模修繕の積立額はふつうどのくらいになるんですか?

伊藤 ︎マンションの規模によって違いますが、だいたい大規模修繕の工事のための積立金は、一戸当たり12年間の合計額で75〜100万円が目安とされますが、実際にはそれでは済まないと考えておいたほうがいいかもしれません。

実は、修繕積立金額については管理費と一緒に考えなければならない実態もあります。次回ではこれについても説明し、また国土交通省から提供されている「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を参考に、国交省が修繕積立金をどのくらいに見積もっているかも紹介したいと思います。