2020年9月9日

設計コンサルタントの不適切を指摘した国交省

「大規模修繕かけこみ寺」外装専科の伊藤岳副社長に、業界リポーターNAKA氏がマンションの大規模修繕工事に関する問題点と改善策を聞く連載シリーズの第2回。

国交省が示した「修繕工事実施前のチェックポイント」

ーー伊藤さんは、前回のお話で大規模修繕工事が国交省でも問題していることを取り上げました。そこで、今回はそのなかで指摘のあった「修繕工事金額が高い」という問題についてお聞きしたいと思います。

伊藤 ︎国交省はホームページで同規模のマンションごとに概況をグラフにまとめ、データ化しています。その数値を有効利用することが大切だろうと思います。具体的には、大規模修繕で設計コンサルタントなどから提示された修繕工事見積もりをご自分たちがお住まいのマンションと同規模のマンションのデータと比較することです。

 国交省も、実態調査の趣旨目的の一つとして「大規模修繕工事を検討する管理組合等において、自らの修繕工事および設計コンサルタント業務の内容の相対的な位置付けを確認し、適正な発注等に活用することが期待される」として、データ利用を促しています。

ーーなるほど。データ利用は工事見積もりを比較できるので大事ですね。ですが、ふつう、マンションの管理組合は修繕に不慣れです。そこで事前に頭に入れておくような具体的な注意点としてどんなことがありますか?

伊藤 ︎国交省もその点を考慮しているんでしょうね。マンション管理組合が大規模修繕工事を実施しようとする場合、「事前に検討したほうがよい主なポイント」を挙げています。

 それによると、

・工事内訳に過剰な工事項目や仕様の設定等がないか。

・戸あたり、床面積あたりの工事金額が割高となっていないか。

・設計コンサルタントの業務量(人/時間)が著しく低く抑えられていないか。特に業務量のウェートの多くを占める工事監理の業務量が低すぎないか。

となっています。このポイントを管理組合としては必要なチェック項目としておくべきでしょう。

 そうすれば、大規模修繕を行うことになった場合でも、設計コンサルタントなどから提示された修繕工事費の見積もりと、国交省のデータと比較して疑問点がないかどうかが確認できますね。こうした手順を踏むことで不要な工事をせずに済みますし、不要な修繕費も払わずに済むというわけです。

ーー国交省が修繕工事前に見られる問題点を挙げてくれているんですね。

伊藤 ︎ええ、国交省は、報道発表資料で、次のように指摘しています。

・最も安価な見積り金額を提示したコンサルタントに業務を依頼したが、実際に調査診断・設計をおこなっていたのは同コンサルタントの職員ではなく、施工会社の社員であったことが発覚した。コンサルタント(実際には施工会社の社員)の施工会社選定支援により同施工会社が内定していたが、発覚が契約前だったため、契約は見送られた。なお、同コンサルタントのパンフレットには技術者が多数所属していると書かれていたが、実質的に技術者でない社長と事務員一人だけの会社であった。

・設計会社が、施工会社の候補5社のうち特定の1社の見積もり金額が低くなるよう、同社にだけ少ない数量の工事内容を伝え、当該1社が施工会社として内定したが、契約前に当該事実が発覚したため、管理組合が同設計会社に説明を求めると、当該設計会社は業務の辞退を申し出た。このため、別の設計事務所と契約し直したところ、自体した設計会社の作成していた工事項目や仕様書に多数の問題点が発覚し、全ての書類を作り直すこととなった。

・一部のコンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託し、結果として、管理組合に経済的な損失を及ぼす事態が発生している。

 まぁ、こんなことがまかり通っていたのですから、マンションの管理組合は注意して大規模修繕に臨まなければならないでしょうね。

ーー国交省は設計コンサルタントに不信感を持ったでしょうね?

伊藤 ︎中には悪質な設計コンサルタントもいるということでしょうが、これまで業界で仕事をしてきたわたくしとしては、コンサルだけではないと断言できます。

ーーそれは同感です。あえてお聞きしますが、コンサル以外の悪質な会社とはどのようなところですか?

伊藤 ︎今回、国交省は設計コンサルタントのみを取り上げていますが、実際にはもっと深刻なんです。なぜなら、一部の管理会社が息の掛かった施工業者に割高な見積もりを出させるケースもあるからです。管理会社は工事項目を多くし、割高になった修繕費に見合うバックマージンなり手数料(リベート)なりを、施工業者に求めることはそれほど難しくありません。次回はそんな管理会社について、少し触れてみましょう。